相続お役立ち情報

被相続人の預金口座は把握される?(相続税の税務調査の実態)

私たちが相続税申告の業務を行っている際に、相談者の方から「税務署はどうやって被相続人(亡くなられた方)の預金口座の情報を把握しているのでしょうか?」とご質問を受けることがあります。税務署は、全国に数ある金融機関の中で、どのように網羅的に被相続人の預金口座の所在を調べるのでしょうか。

今回は、税務署の調査手法の一端が垣間見える事例がありましたのでご紹介させて頂きます。

申告漏れの指摘は現金預金が最も多い

平成29年度(直近のデータ)の相続税に関する税務調査の実地調査件数は12,576件と公表されています。年間の相続税申告件数が10万件超であるため、申告された方の約12%の方に税務調査が行われていることになります。調査の結果、申告漏れとされた財産のうち、約34.1%が現金や預貯金というデータが出ております。これは不動産(13.6%)や有価証券(15.2%)を超えて、財産の種類ごとの構成比の中で最も大きい割合となっています。

「現金や預貯金」の申告漏れの中には、いわゆる名義預金や手許現金、被相続人名義の預金口座の計上漏れが含まれると考えられます。

身に覚えがない預金口座の申告漏れ?

以前相続税申告後に行われた税務調査の立ち合った際に、こんなことがありました。

調査対象者は関東近郊在住で、遺産総額が約1億5千万円位の方でした。通常、相続税の税務調査に入られる方の遺産規模は3億円を超えることがほとんどですので、一般的な水準よりも少ない財産額であったことが印象的です。

実地調査当日、税務署の調査官からひと通り定型的な質問を受けた後で、相続人(お子様)に対し、「近隣のXX銀行XX支店にお父様(被相続人)名義の預金がありませんでしたか?」という質問がされました。お子様にとって全く身に覚えのない預金で、実際に亡くなられたお父様もその支店にお口座はお持ちではありませんでした。当然相続税の申告においても計上していないものでした。

調査官はどういった意図でこんな質問をしたのでしょうか。

その後の調査官とのやり取りで、実はご近所(同じ街区)にお父様と同姓同名の方が住んでいたことが分かりました。調査官がピンポイントで質問した預金口座は、この同姓同名の方の口座でした。しかも偶然は重なるもので、その同姓同名の方もたまたま同時期にお亡くなりになっていたそうです。税務署側が、「この口座がお父様の相続税申告において計上漏れであったのではないか」と、完全に誤解していたことが判明しました。

税務署は、調査にあたって被相続人の住所の履歴、勤務地の履歴を調べます。これは生前の住所地や勤務地の周辺の金融機関に被相続人名義の口座がないか、申告漏れがないかを確認することが目的の一つにあるようです。近隣の預金口座をしらみつぶしに調べるわけです。今回ご紹介した事例も、言葉は悪いかも知れませんが、このような原始的な調査手法を行っていたために生じた誤解であったと言えます。

マイナンバー本格導入で何が変わる?

前述の調査手法も、マイナンバーの導入によって変わることが予想されます。

銀行では、平成28年1月から投資信託や個人向け国債などの特定の商品(預貯金は除く)を購入するための口座開設の場合には、マイナンバーの通知が求められています。

預貯金についても、平成30年1月からマイナンバーの導入が開始されました。銀行で新規の預金口座を開設する際には、マイナンバーの通知が求められることになりました。ただし最初から義務とされたわけではなく、3年間は任意とされ、義務化は令和3年からと予定されています。この任意の期間については金融機関からマイナンバーの提示を求められても断ることが出来ます。今後は既存の預金口座についても順次マイナンバーの通知が求められることが予想されます。

銀行預金にマイナンバーが本格導入されると、税務当局は、全国の預金口座とマイナンバーの紐づけが可能になります。

その結果、個人の銀行口座の網羅的な情報収集が容易になると推測されます。例えば東京で亡くなられた方がお持ちだった北海道の銀行口座であっても、マイナンバーで紐づけることにより情報収集が容易になりそうです。

当然意図的に計上すべき預金口座を隠すことは脱税になりますが、そうではなくても、相続人が把握していなかったために意図せず計上漏れとなってしまった預金口座について、マイナンバーを活用して税務署によって把握される可能性があります。

申告をする側である私たちも、マイナンバーの本格導入後の預金口座情報の把握は、より精度を上げて行っていく必要があると言えます。

税理士法人ブライト相続 税理士 竹下祐史

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