相続お役立ち情報

税金が約610万円も安くなる制度(空き家譲渡の特例)の恩恵を受け損ねてしまった事例。相続前の工夫とは

日本では現在、増える空き家が問題になっています。
その数は最新の調査では全国に846万戸(全住宅に占める割合は13.55%)あり、今後も増加していくことが予想されています。
空き家が発生してしまう大きな原因の一つは「相続」です。
実際に相続のお手伝いをしていますと、核家族化が進んだことにより親が一人で暮らしていた実家が相続を機に空家になるケースが多いことを実感しています。
こういった空き家対策の一環として平成28年に創設され既に多くの方がご存知とは思いますが、相続した実家を売却した際に、譲渡に係る税金が最大約610万円安くなる特例があります。(以下「空き家譲渡の特例」と言います)
今回は、”相続発生前の工夫があれば空き家譲渡の特例が受けられた”という事例を紹介しながら制度の内容をおさらいします。

空き家譲渡の特例とは?

(要件)
特例を受けるためには、主に下記のような要件があります。
※このほかにも細かくルールが存在します。

①相続発生から3年目の年末までに売却すること。
②その建物には亡くなった方が一人で暮らしていたこと。
③その建物は区分所有建物(マンションなど)でないこと。
④その建物は昭和56年5月31日以前に建てられたものであること。
⑤土地建物は相続発生から譲渡まで未利用であること。
⑥譲渡価額が1億円以下であること。

(計算方法)
譲渡所得税(所有期間5年超の長期譲渡所得の場合)の計算は下記のように行います。

譲渡所得金額=譲渡に係る収入(A) − 取得費・譲渡費用(B) − 特別控除
譲渡所得税額=譲渡所得金額 × 20.315%(所得税・住民税)

空き家譲渡の特例は、特別控除として3,000万円を控除することができる制度です。
つまり、A−Bが3,000万円以上であれば、3,000万円×20.315%≒610万円の減税効果が得られるということになります。
(事例の家族構成など)
父:平成20年亡(※1)
母:平成29年亡(※2)
子:長男(※3)
(※1) このとき自宅の土地は母、建物(昭和52年築)は子が相続
(※2) 相続時の土地評価額:5,000万円、建物評価額:200万円
(※3) 父の相続前は父母と同居していたが、父の相続の数年後から別居

特例の適否、そして生前の工夫とは?

さて、この事例において母の相続の際空き家譲渡の特例は受けられるでしょうか?
親が一人暮らしをしていた実家の不動産を相続しているので一見受けられそうにも思えますが、答えは”適用不可”です。
実は、上記で挙げた要件のほかに、
譲渡する不動産は土地も建物も両方とも相続で取得したものでなくてはならないというルールがあります。
事例では、子は母から土地だけしか相続していないので特例要件を満たさなくなってしまいました。
つまり、母の生前において子から母へ贈与又は売買により建物の名義を変更していればよかったことになります。
もちろん贈与等に伴っては費用が発生し、この事例では贈与であれば贈与税9万円を含む20万円~30万円程度の諸費用がかかりますが、空き家譲渡の特例による約610万円の恩恵を考えれば安い必要経費です。

一次相続での遺産分割の考え方

※上記事例では、父の相続=一次相続、母の相続=二次相続

二次相続における相続税を不安視して一次相続の際に別居の子が実家の土地を相続するというケースがあります。
しかし、この場合には当然ながら二次相続において空き家譲渡の特例の適用を受けることができませんので、
結果的に相続税の減税効果が空き家譲渡の特例による減税効果(約610万円)を下回ってしまうことも考えられます。
空き家譲渡の特例は時限立法(現在の適用期間は令和5年12月31日まで)ではありますが、今後も延長される可能性はありますので、一次相続における遺産分割を考える際には意識しておくことが望ましいでしょう。

さいごに

今回は空き家譲渡の特例をテーマに相続発生前や遺産分割の工夫についてお話をしましたが、これに限らず相続対策のアイデアは、「今自分に又は親に相続が発生したらどうなるか?」と考えることから生まれるものですので、必要であれば相続の専門家の知恵を借りながら一度思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。

税理士法人ブライト相続 山田 浩史(やまだ ひろし)

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